東京下町貼雑帳

「幽鬼の塔と橋の話」の前に

そろそろ「幽鬼の塔」について書こうと思っていた。「幽鬼の塔」といえば、浅草の隅田川や上野公園から事件の謎がスタートしていくから、このブログでも書く事がたくさんある。来年の初めは「幽鬼の塔」でいくつかやるつもりだ。

先日、その題材の写真を撮るつもりで、厩橋にいってみたらあいにくと改装工事中。ご覧のように橋にきれいに覆いがかけられている。これもまた珍しいので紹介していくことにした。
隅田川は「橋のギャラリー」と言われているくらい多くの橋が架けられていて、またそのデザインも橋ごとに多彩、形も色もバリエーション豊富で誠に楽しい。そのなかでも私の家の近くに架かる３つの橋、「吾妻橋」「駒形橋」「厩橋」はそれぞれ架け方の様式が異なってユニークだ。

そんなことの紹介を書こうと思って、写真を撮りにいったんだけれど、工事中というわけなので、修理完了後に機会を譲ることにする。

今年もありがとうございました。
皆様よいお年をお迎えください。

本日は二の酉

先ほど鷲神社に行って来た。本日は二の酉。一の酉が１１月１１日で二の酉が２３日、今年は二の酉までだ。今年は私が参拝した時間が早いのか、それとも商売繁盛を熱烈に願う人が多いのか、例年になくごった返していた。門の前５０メートルからすでに行列でのろのろと前に進んで行った。昨年に比べて冷え込んでいて、酉の市としては大いに盛り上がっていた。
熊手の売れ行きも上々な様子で、そこかしこの露店から景気のよい手締めの音がひっきりなしに聞こえてくる。
「いよぉー、ちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃっ！。ちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃっ！。ちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃっ！」
来年がいい年になりそうな予感がするなあ。

伝法院通りに賊発見！

本日、天気がよいので浅草を散策。伝法院通りを歩いていた。この通りは近年とても面白いリニューアルをして、観光客を楽しませている。浅草公会堂通り（オレンジ通り）とT字にぶつかるこの通りは昔から、踊りの衣装や古道具、櫛や三味線、軍隊の払い下げ品などが露店で並び、むしろ仲店通りよりも浅草らしい町並みが楽しめる。

リニューアルした伝法院通りは、店のファサードや看板、シャッターに江戸の町並みはこんな感じというような演出を施してあり、ちょっと目線を上げて町並みを眺めるとタイムスリップした感覚になるというわけ。そんな景色を楽しんでいると公会堂通りと交差する角の呉服やの屋根を若者が指差してさかんにデジカメで撮影している。伝法院通りのシンボル（？）ねずみ小僧を発見したらしい。二十面相じゃあないけれど、スマートな賊に敬意を表して私も１枚撮っておいた。

水族館の回想

「緑衣の鬼」に関して最近何度も書いている。「緑衣の鬼」といえば水族館の場面が印象的で、この作品を読むと自分の今までの水族館体験を思い出すのだ。私にとって水族館は、あまり明るくて健康的なイメージではなかった。別に水族館が嫌いなわけではなく、むしろ大好きである。また魚にしても食べるよりも観察するほうがむしろ好きである。というか水族館は暗くてじめじめして、おどろおどろしいところがよいと思っている。

私の人生において印象的水族館体験はいくつかある。まずは上野の水族館。上野公園の不忍池をバックに建つ動物園とセットの水族館。残念ながら現在は、葛西臨海水族園が出来て上野は閉鎖してしまった。子供の頃は魚を見るのもほどほどで、お目当ての爬虫類コーナーに走ったものだが、その後大人になって、大学生くらいになると、やたらに暗い色合いの魚に惹かれた、特に１階の入り口付近の大水槽がアマゾンの巨大な怪魚で満たされていた時のことは印象的に覚えている。

あとは、千葉県外房小湊海岸にある旧東京水産大学の研究所にある水族館。今は他の大学の施設になっているようだ。私は高校時代この水族館の２階の研究室に合宿して、ムラサキウニの発生の研究をしていた。（高校時代は生物部の所属していた。懐かしい！）。夜、顕微鏡をのぞくのに疲れると、１階の水族館に降りていった。夜だからもちろん暗い水族館、そのじめじめした廊下を歩きながら、水槽のなかを眺めると、年取ったようなタカアシガニや傷だらけのネコザメなんかが、ゆらゆらと泳いでいる。この光景が私の水族館像をつくったともいえる。

あともうひとつ、これも高校時代だが、修学旅行で九州に行った時にみたホテル内の水族館の光景。やはり夜だったと思う。じめじめした通路を踏みしめながら見た大水槽の中には、サメとエイばかりがひしめき合うように大量に飼われていた。灰色のものがすごいスピードで水槽の中を泳いでいた。絶対に入りたくない水槽だ。

それからずっと年月が経って、「緑衣の鬼」のような美女が泳ぐ水槽もみた。六本木の会員制クラブ（会員制じゃないかもしれないが、入り口チェックがやけに厳重だった）でのこと。きらびやかな店内の一画が巨大水槽になっていて、ショータイムには美女がトップレスで泳ぐ。はじめて見た時に、「あっ、緑衣の鬼！」と思ったのだが、でも何かが違う。しばらく考えてみて、美女が金髪だからイメージが違うということに気が付いた。水槽でもがく美女は絶対に黒髪がいいんだと。

浅草「新世界」の写真（２）

前回に引き続いて、satoruさんから送っていただいた浅草新世界に関する貴重な写真を紹介します。とても興味深いです。

左側の写真を見てくださいな。屋上階にスカイウェイというロープウェイが描いてあって、浅草寺境内へと書いてある。竣工当時はこのようになっていたのだろうか、俺が知っていた浅草新世界にはこんな施設はなかったように思うのだが、本当はどうなんだろうか？

あとはこんな写真もありまして、興味深いなあ。
   これはマンモスキャバレーと書いてあるところだろうか。いかにも浅草っぽい艶かしい踊り子さん達の写真だ。和風で湿り気がある。エロっぽい。
左側の写真のセット料金750円とか御指名料400円が時代を感じさせる。今ならゼロが一つ違うくらいの感覚なのか、そうなるとセット料金はともかく指名料がちょっと高いか？どうなんだろう。前に一度、新宿の巨大なキャバレーに行ったことがあったけど、そんな雰囲気なんだろうなあ。

お次ぎの２枚の写真はどうやら1階の浅草名店街や地下の飲食街の店舗案内図のようだ。少年時代によくつれていってもらった、おにぎり屋「たんぼ」も出ている。

どうです。面白いでしょう。実はまだもう少し写真があります。もう1回くらい紹介できそうです。ではまた。

浅草「新世界」の写真（１）

以前、このブログで「乱歩と浅草と『浅草新世界』」という投稿を行いまして、もし「浅草新世界」のことをご存知の方がいらっしゃったら、ぜひ情報をください。とお願いしたところ、satoruさんからコメントをいただき、今回とても貴重な「浅草新世界」の写真を送っていただいた。
なんでも、satoruさんのおじいさまが「浅草新世界」をつくられたということで、当時の資料に残っていた写真を複写してデータを送ってくれました。どれも素晴らしい写真ばかり、ほんとうにありがとうございました。

「新世界」が営業をしていた頃は俺もまだ少年で、建物全体の構造はまったくわからずに、遊んだ場所だけが断片的に記憶に残っていた訳だが、今回の写真を見せてもらって、自分の知らない場所に他にどういうものがあったのかが、だんだんわかって来た。要するに1階の名店街のおにぎり屋（たんぼという屋号らしい）と、５階と６階のマジックランドしか記憶がないのだ。あの当時もし俺が大人だったら、さぞや面白い遊び場だったんだろうと想像できる。まことに残念である。

今回はこんなところで。送っていただいた写真はまだあるので、また次回ご紹介させていただきたい。

酉の市へ行って来た

先ほど鷲神社から帰って来た。今年は、本日11月4日（土）が一の酉、11月16日（木）が二の酉、そして11月28日（火）が三の酉となる。昔から三の酉まである年は火事が多いと言われている。それで神社では今年は特に火除けのお守りを配っていた。土曜日が一の酉に当たる今年は鷲神社は大にぎわいで、お参りまで長い行列が続く。

ところで俺の記憶では、毎年酉の市の時分にはもう十分に寒くてコートを着込んでお参りに行ったと思う。しかし今年の陽気はどうしたことだろう。俺はシャツに薄手のセーターを一枚羽織っただけ。そうまるで台北の夜市を歩いている感じと変わらない。夜市といえば、今日の夜店も食べ物のラインナップは国際化していて、台湾風では葱餅、韓国風ではチヂミの他にもトッポギやチャプチェ、そしてドネルケバブ、タイ風ラーメンまである。酉の市で昔からある露店で有名なのは、切山椒とべったら漬け、南京豆、なまこ餅が俺にとってはお馴染みだったが、年々変わっている、まあそれもいいんだけど。でも今日は温かかったなあ。

東京時代祭

本日は文化の日。浅草雷門は「東京時代祭」で賑わっていた。このイベントがいつから始まったのか俺は知らないが、京都の時代祭よりも、ライトで楽しい。次々行列で登場する時代絵巻はどれも浅草らしいコミカルな演出で見物の笑いを誘っていた。ところで浅草（向島）の芸者さんって、かなりきれいなお姉さんが多いですな。ほらこんな感じ。

俺の家の前は、５月に三社祭、８月にサンバカーニバル、そして１１月に時代祭と数ヶ月毎に何かが練り歩いているが、季節を追うごとにだんだんレイドバックしてきて、見ていてほっとする。三社祭なんて見ているこっちも気を抜くと殺されちゃうかもしれないくらいの必死さが伝わってくるからね。

乱歩の「浅草趣味」再び

あまりの永き休暇に恥じて、初心に戻って乱歩と浅草について書こうと思う。乱歩が浅草を語る文章が彼の随筆集「探偵小説四十年（上）」（大正１５年）に収録されている。こんな文章である。

　僕にとって、東京は魅力は銀座よりも浅草にある。浅草ゆえの東京住まいといってもいいかも知れない。尤も、活動写真の中心が浅草を離れた形で、その上『プロテア』時代の魅力ある絵看板も禁ぜられているので、やや昔日の俤を失ったが、それにしても、やっぱり浅草は浅草である。江川玉乗り一座のなくなったのは淋しいが、時々小屋掛けのサーカスも来るし『花やしき』には昔ながらのダーク人形、山雀芸等をやっているし、平林、延原両兄が乗った木馬館もあるし、因みに、これには僕も乗ったし、最近では横溝正史君が乗って、大いに気をよくした由である。また僕の大好物の安来節もあるし、そこへ時々は女角力なんて珍物も飛込んで来るのだ。（以下、略）

その後に、ひとしきり浅草木馬館の話、照れくさがる乱歩を無理矢理に木馬初体験させた、萩原朔太郎の想い出と続いていく。
今の浅草ではもちろん木馬には乗れないし、花やしきも変わってしまった。でも、そのかわりと行っては何だが、先週の日曜日は浅草サンバカーニバルがあった。昔は「こんなに浅草に似つかわしくないイベントはないな」と思っていたけれど、今では「これはいかにも浅草にぴったりだ」と考えを大きく変えている。本場リオのカーニバルには日頃抑圧された人々が年に一度大爆発するという陰のパワーが背景にあるということだが、浅草にはまったくそれがない。それが今の浅草なんだろうな。そんな浅草が今でも時折覗かせるダークな顔を見つけた時がまた楽しいんですけどね。

浅草「木馬亭」

先日久しぶりに三社祭でにぎわう浅草奥山界隈をぶらぶらと歩いてみました。「木馬亭」の周りもいつも以上の大にぎわい。よくわかりませんが、観音様のピークシーズンに興行をはる一座ですから、さぞかし人気の面々なのでしょう。ちょうど舞台がはねた後らしく出演者も小屋の外に出て来てファンと交流しています。ビジュアル系のロックバンドのような華やかな役者でした。

あともう一つ、今回は木馬を撮影しました。小屋の入り口にガラスのショーウインドウがあってそのなかに飾ってありました。ガラス越しなので、写りの悪い写真ですが、小さいのがおわかりになるでしょうか？乱歩の「木馬は回る」の木馬ですね。メリーゴーラウンドですから、この小さい木馬がぐるぐるとジンタにあわせて回ったことでしょう。そして子供ばかりか大の大人もまたがって、笑ったり泣いたりしたんですね。実際に乱歩も好きでずいぶん乗ったようです。横溝正史も萩原朔太郎も乗ったそうです。
なんだか木馬がタイムマシーンのように感じられて来ました。