「緑衣の鬼」に関して最近何度も書いている。「緑衣の鬼」といえば水族館の場面が印象的で、この作品を読むと自分の今までの水族館体験を思い出すのだ。私にとって水族館は、あまり明るくて健康的なイメージではなかった。別に水族館が嫌いなわけではなく、むしろ大好きである。また魚にしても食べるよりも観察するほうがむしろ好きである。というか水族館は暗くてじめじめして、おどろおどろしいところがよいと思っている。
私の人生において印象的水族館体験はいくつかある。まずは上野の水族館。上野公園の不忍池をバックに建つ動物園とセットの水族館。残念ながら現在は、葛西臨海水族園が出来て上野は閉鎖してしまった。子供の頃は魚を見るのもほどほどで、お目当ての爬虫類コーナーに走ったものだが、その後大人になって、大学生くらいになると、やたらに暗い色合いの魚に惹かれた、特に1階の入り口付近の大水槽がアマゾンの巨大な怪魚で満たされていた時のことは印象的に覚えている。
あとは、千葉県外房小湊海岸にある旧東京水産大学の研究所にある水族館。今は他の大学の施設になっているようだ。私は高校時代この水族館の2階の研究室に合宿して、ムラサキウニの発生の研究をしていた。(高校時代は生物部の所属していた。懐かしい!)。夜、顕微鏡をのぞくのに疲れると、1階の水族館に降りていった。夜だからもちろん暗い水族館、そのじめじめした廊下を歩きながら、水槽のなかを眺めると、年取ったようなタカアシガニや傷だらけのネコザメなんかが、ゆらゆらと泳いでいる。この光景が私の水族館像をつくったともいえる。
あともうひとつ、これも高校時代だが、修学旅行で九州に行った時にみたホテル内の水族館の光景。やはり夜だったと思う。じめじめした通路を踏みしめながら見た大水槽の中には、サメとエイばかりがひしめき合うように大量に飼われていた。灰色のものがすごいスピードで水槽の中を泳いでいた。絶対に入りたくない水槽だ。
それからずっと年月が経って、「緑衣の鬼」のような美女が泳ぐ水槽もみた。六本木の会員制クラブ(会員制じゃないかもしれないが、入り口チェックがやけに厳重だった)でのこと。きらびやかな店内の一画が巨大水槽になっていて、ショータイムには美女がトップレスで泳ぐ。はじめて見た時に、「あっ、緑衣の鬼!」と思ったのだが、でも何かが違う。しばらく考えてみて、美女が金髪だからイメージが違うということに気が付いた。水槽でもがく美女は絶対に黒髪がいいんだと。
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