たぶん誰でも知っているであろう有名な話なので、今更いうまでもない事だとは思ったけれど、江戸川乱歩の本名は平井太郎である。
そして日本の推理小説作家として最も偉大なる『江戸川乱歩』というペンネームはあの推理小説や恐怖小説で有名なアメリカの作家で詩人のエドガー・アラン・ポーの名前からつけられている。先日から「探偵小説四十年」という乱歩が自らの歴史を語る自伝的作品を読んでいるので、そのなかから彼の作家デビュー当時のペンネーム決定に至る経緯を語っている部分を紹介したいと思う。
「石塊の秘密」の作者、江戸川藍峯とは無論私のことで、そのころポーの名をもじってつけた号だが、どうも藍峯という字面が漢詩人のようで古めかしい、其後も何かいい字はないかと心がけていたけれども、大正十一年「二銭銅貨」と「一枚の切符」を書くときまできまらなかった。あれを書いて送るときに、亂歩(らんぽ)ときめたのである。これも意味のない熟語で、やはりおかしいのだが、見た目の字づらがいいので、我慢することにした。
というわけで、江戸川乱歩は登場したのである。
しかし、ここでも乱歩さんは自分のペンネームに満足していない。照れているのか、「意味のないとか、やはりおかしいとか」くさしている。
なんか面白いなあ。
ところで写真は乱歩作品とは全然関係ないけど、この間駒形橋のたもと辺りを歩いていて見つけた古い家。あまりに怖い感じなのでシャッターをきった。いまでもこんな景色に出会うとは驚いた。この正面の2枚の鉄のハッチのようなものはいったい何だろう。
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