このブログも昨年の大晦日に更新したきり、年も明けてずいぶんたった。「幽鬼の塔」を書くといったきり、今日まで何にもしていない。とりあえず何か書かないと1月は何もしないと思ったので、まずとりとめもなく口を切ることにした。
「幽鬼の塔」であるが、この作品は昭和14年4月から15年3月にかけて「日の出」に連載された。「日の出」は新潮社が出版していた大衆娯楽誌でその書名からも想像できるようないわゆる戦時下の大衆雑誌。したがって国威発揚的な内容が横溢していた模様。
だが幸い「幽鬼の塔」にはその匂いはない。しかし前後に発表された、「大金塊」「新宝島」「知恵の一太郎」「偉大なる夢」などは、お国を意識した記述がずいぶん見られる。そして、戦後昭和24年あたりまでほぼ絶筆する。「幽鬼の塔」は戦時下に突入する時代、最後に書いた大人向け探偵小説。これを最後と好きなことを書いた。だから前半は実におどろおどろしく素晴らしく。後半はいい加減に話のつじつまを合わせようとした気配が見られる。
つまり、あまり物語の筋書きや構成にとらわれることなく、書きたいところだけ極彩色のアイデアを注ぎ込んでいる。そのために基本の筋書きを海外の作品に求めて翻案するという得意(?)の作戦を使う。今回はシムノンの「聖フォリアン寺院の首吊り男」という作品。だが、「緑衣の鬼」ほど翻案は徹底していない。そこでほころびも目立つ。しかしその分、見所も満載というところか。
では、次回は冒頭から読んでいこう。
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