江戸川乱歩の「探偵小説四十年」という自伝作品がある。昭和24年に『新青年』において連載を開始して、その後『宝石』に引き継ぎ、足掛け12年にわたって書き続けてきた。いわば乱歩が語る乱歩のすべてがここに残されているといっても過言ではない。
乱歩という人は面白い人で、自らの作品に対する評価がとても辛い。やれひどいものを書いてしまった。最後は支離滅裂だ。気力が続かなかった。などなど、これは傑作だ!という自薦コメントを見た事がない。夢枕獏が「断言しよう。この作品は絶対に面白い!」と、どの作品についても必ずあとがきで言い続けるのとは、正反対だ。ここんところが、私の乱歩さんの好きなところのひとつだ。実は自信満々の夢枕獏も大好きなのだが。
まだ、最初の自序というところしか読んでいないが、もうすでに気になるところがいくつかあるから、備忘録的にいくつか書いて行く。
「私が小説らしいものを書いた期間は驚くほど少なく、合わせて十数年にすぎないであろう。まことに気力の乏しい作家生活であった。」
乱歩が処女作の「二銭銅貨」を書いたのが大正11年で、この「探偵小説四十年」がまとまるのが、昭和35年。約40年間のなかで、随筆や少年ものを除くと、また休筆期間も考えると、こんなに短いということだ。
「私は日記が書きつづけられない性分だから、自分に関する記録は何でも収集しておくくせがあり、新聞、雑誌の切り抜きなど丹念に保存して、その大部分は「貼雑帳」という大きなスクラップ・ブック数冊に貼りつけてある。」
「貼雑帳」は私のブログのタイトルにも拝借しているが、まさに乱歩の歴史のすべてが乱歩的に整理されている一種異常な労作である。自分に関する事をこれほど詳細に収集するという行為はスゴい事なのだが、もっと驚きはそれを大作家自らが鋏と糊を使って、丹念にレイアウトしながらスクラップしていくという孤独な作業の結晶としての価値である。私は激しくこの事実にインスパイアされたものだ。
「探偵小説四十年」というテーマで何回ブログを更新するかわからないけれど、色々と面白い事が発見できそうだ。
「貼雑帳」→貴兄の唯一無二(?)の弟子であるA.Nさんが持っているスクラップ帳は形としてこの系譜にあるものなのでは?(っていうと、急に白けちゃうかしら~笑)
投稿情報: TPC | 2008-03-04 17:06
TPCさん
コメント感謝です。
うーん、何のことかわかったけど、あれとは違うんだよなあ。
あれはちょっと違うなあ。
投稿情報: 乱歩帳 | 2008-03-04 22:13