「銅版画 江戸川乱歩の世界」は、春陽堂から刊行されている『江戸川乱歩文庫』全30巻の表紙を担当している版画家、多賀 新(たが しん)の作品集。表紙に使用された銅版画作品と乱歩作品のあらすじが見開き各見開きで展開されている。
多賀新の作品は不思議なメタモルフェーゼを表現していて、存分にエロティックだ。乱歩作品の挿絵というと竹中半太郎の「芋虫」や「盲獣」をまっさきに思い出すが、この多賀新も私にとってはとても強烈な印象で忘れられない。
春陽堂といえば老舗の出版社で、第1作の「心理試験」以来昔から乱歩との付き合いも深い。そんなことで、春陽堂の乱歩全集は過去にも何回か刊行されているが、現在普通に入手できるのは、昭和62年より刊行開始された『江戸川乱歩文庫』全30巻のみである。全体的につやつやとした黒い装丁におどろおどろしい多賀の銅版画が表紙に配されていて、背表紙のタイトルは赤字。いわゆる乱歩好みの黒と赤の和世界、私の好きな乱歩全集ひとつだ。
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