蜘蛛男で始めた企画(?)。悪乗りして今回は乱歩のエログロの代表作である『盲獣』でいってみようと思います。『盲獣』は昭和6年から「朝日」に連載されたいわば変態的犯罪小説で、自称触覚芸術家を名乗る盲目の殺人鬼が自分の好みの女を撫でまくり、殺しまくり、それを切り刻んで、街中に展示して廻るという狂ったストーリーです。別に謎解きもなく明智小五郎も登場しません。
当初、前回の蜘蛛男の餌食に娘は井上和香か?というお題に反応した時には、「いえいえ違います。井上和香は盲獣好みの娘です」といいたかったんですが、その時にあらためて『盲獣』を再読してみて、惜しいけどなんか違う。と思ったのです。確かに盲獣の獲物はみんな肉感的だが割合年増なのです。脂が乗りきったと申しましょうか。その上一番の違いは、年増だからでしょうか、盲獣に按摩なんかされると一様にいい気持ちになって、うっとりと殺されてしまう。『蜘蛛男』の娘たちのように無理やりじゃないところが、またこの作品のなんともいやなところでして、乱歩の変態的なサービス精神が横溢しているなあと思ってしまいます。
まず最初の犠牲者は、浅草レビュー界の女王とうたわれた水木蘭子。30歳を既に越えていたが、みずみずしい肉体と美しい声持ち今が盛りと輝きわたる爛熟の花。蘭子は殺されてバラバラにされて東京中に飾られます。
次の犠牲者は「真珠夫人」と呼ばれる、銀座の有名カフェ「パール」のマダム。このひとも、もう30歳をよほど過ぎた年増ではあったが、顔も美しく顔にも増してその肌はまるで小娘のようになめらかで、健康に張りきっていて、この年になるまで男を知らないのではないかと疑われるほどういういしく見えた。とあります。
3人目は、美人未亡人大内麗子。そして4人目は新婚の海女。もうでたらめです。この企画は当初、盲獣が好きな女優は誰か?なんて軽いタッチにしようと思ったのですが、殺されるイメージがリアル過ぎるのでやめます。皆さまは原作を読みながら勝手に想像してみてください。文庫版でお奨めは創元推理文庫の乱歩傑作選14の『盲獣』だと思います。竹中英太郎のエログロい挿し絵が満載です。
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