神楽坂で作家物の生活小物を扱うギャラリーである「ラ・ロンダジル」は、私にとって素通りのできない店のひとつだ。このほど本店の他に毘沙門天の裏通りの住宅地のほうに、町家を改造したこぢんまりとしたギャラリースペースをオープンした。そこでやっていた個展が「須藤拓也 陶展」だ。須藤拓也は1972年に福島県で生まれた作家で、「ラ・ロンダジル」では初めて個展を行うとのこと。
本店のほうで場所を聞いて、たどり着いた新ギャラリーはもとは小唄のお師匠さんの家という小さいながら、玄関から飛び石があってつくばいがあって、庭も見えるというまことに結構な建物。作品は和室の畳の上にそのまま置いたり、お膳に並べたりとユニークな展示方法。お客はしゃがみ込んで、器と対面する。須藤さんは今回の個展でじつに様々な作風を披露している。でっぷりと豊かな手びねりから薄手の絵付け、そして錆び銀彩のお皿まで。ギャラリーのスタッフだと思っていた若い兄さんに「こっちの作家は誰ですか?」と聞いたら、「いえ、これも僕です」と言われてしまった。たいへん失礼した。
選びに選んで結局、写真の3点を買った。なんだがミノカサゴのような縞模様が気に入った。それぞれ縞にニュアンスがあったり、横から見た時の器のふくらみが愛らしい。杯には大きく、飯椀には小さいという曖昧な感じが想像をかきたてる。
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