最近面白い本を読んだ。横溝正史と小林信彦の対談を収録した角川文庫の「横溝正史読本」だ。日本の探偵小説を黎明期から歩んできた巨匠である横溝正史が、こちらも博覧強記のミステリーの怪人である小林信彦と対談する歴史の奇跡のような本である。最晩年の横溝が語る日本の推理小説の目撃談はどのページを読んでも飽きることがない。
そのなかで当然、江戸川乱歩に関する話もたくさんでてくる。
とても楽しいので、以下引用で紹介する。
横溝 あなた、不精ヒゲを生やしている乱歩見たことある?
小林 いえ、ないです。
横溝 ぼくは一ぺん見たことあるんだ。電話もかけずに突然行ったのよ。そしたら乱歩、不精ヒゲ生やしてたな、予告していなかったもんだから。
小林 そうすると、あれはいつも剃ってたわけですか。ぼくは、ヒゲが生えないタチかと‥‥。
横溝 いやいや、あれは毛深い人ですよ、ここ(頭)はないけど‥‥。
小林 ここ(腕)はものすごいでしょう、それでヒゲが全然ないでしょう。そうすると、しょっちゅう剃っていたわけね。
横溝 そう、おしゃれですからね、あの人。 (以下、略)
まあ、よけいなお世話だと思うんだけど。かなり熱心に乱歩が毛深いことを語っているわけだ。
この横溝正史の話し方がとてものほほんとした感じで好感が持てる。
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