浅草観音様の二天門は観音様の本堂に向かって右側、東に向いて開いている門で、国の重要文化財に指定されている。もともとは元和四年(1618)に浅草寺の境内に東照宮が建てられた時に随身門として建てられた切妻造りの八脚門で、周辺の数回にわたる火災や戦災からも免れた貴重な建てもの。その二天門が現在は
大改装中で写真のような覆いがかけられている。覆いの中を覗いてみたら、なんにもない。解体して他の場所で修復しているんだろう。
江戸川乱歩の作品で二天門と観音様の境内は、「人間豹」がのしのしと跋扈する都会の魔窟だ。
「人間豹」の作品中では、たとえばこんな感じで登場している。
「いや、そうとはかぎらんよ。東京じゅうでこの公園ほど、犯罪者にとって究竟の隠れ場所はないともいえるんだ。ここは都会のジャングルだよ。和洋あらゆる種類の建物がごたごたと建ち並んでいる。おびただしい露店の群れがある。いたるところに抜け裏がある。そのうえ、ひっきりなしの大群集だ。それらがすべて、犯人を隠す叢林にも等しいのだぜ。もしあいつがこの公園を隠れ家にえらんだとすれば、その着想に敬服しないわけにはいかん。人間豹と都会のジャングル、実にうまい取り合わせじゃないか」明智は感嘆するようにいうのだ。(中略)むろん、興行物ははねてしまい、夜店商人たちもほとんど帰った後で、宵の明るさにぎやかさはあとかたもなかったけれど、夜ふけの参詣者、お百度参りなどの黒い人影がちらほらして、二天門をはいったところには、これからが商売の易者のテント張りが、ぽつんと取り残されるように立っていた。
(以下、略)
下の写真が、ちょっと前になるけど、改装前の二天門。古びて黒っぽい感じがいかにも重要文化財であります。
コメント