「赤い部屋」は大正14年4月号の「新青年」に発表された。「新青年」が江戸川乱歩に依頼した、六ヶ月連続短編小説のなかの1作。
そのストーリーはこんなもの。退屈を持て余した紳士たちは、血腥い刺激を求めて「赤い部屋」という猟奇クラブに夜な夜な集まってくる。ある晩、赤い部屋に新しい会員として一人の青年がやってくる。彼は自分が今まで誰にも疑われる事なく99人を殺害したと告白し、その殺害の方法を次々と説明していく。彼が語る殺害方法は偶然を装いながら確実に獲物を死に追いつめていくもので、いわゆる「プロバビリティーの犯罪」である。
青年は100人目の殺害を赤い部屋で達成しようとあるトリックを仕掛けるが‥‥。
江戸川乱歩はこの「赤い部屋」を書くにあたり、谷崎潤一郎が書いた探偵小説の傑作「途上」を意識している。「途上」をもっと通俗的にして、トリックを山盛りにしたという。たしかに「赤い部屋」には若い乱歩が絞り出した偶然を装った多彩なトリックが詰め込まれており、それがキラキラと輝いている。
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