今日は天気がよかったのでデジカメを持って、浅草公園を六区から奥山と散策してみた。この辺りは煮込み通り(最近大流行り!)、ウインズ、花やしきと人通りが多い。そしてこの周辺に来ると瓢箪池(ひょうたんいけ)のことを思う。私が物心ついた時には既に埋め立てられてしまって、跡形もないのだが、乱歩の初期の短篇「モノグラム」に登場する瓢箪池がまるで不思議の国への入り口のような感じがして、妙に気になってしまう。そこでこの汚い写真だが、これは奥山通りに展示してある写真をさらに自分で撮影したもの。雨がしみ込んで表面がボツボツして見ずらいが、昔の瓢箪池の様子が写っている。このぼんやりした感じが、かえって「モノグラム」世界に引きずり込こまれてしまうような。乱歩の「モノグラム」に登場する瓢箪池のシーンはこんな具合。
公園といっても六区の見世物小屋の方ではなく、池から南の林になった、共同ベンチのたくさん並んでいる方ですよ。あの風雨にさらされて、ペンキがはげ、白っぽくなったベンチに、又は捨て石や木の株等に、ちょうどそれらにふさわしく、浮世の雨風に責めさいなまれて、気の抜けたような連中が、すき間もなく、こう、思案に暮れたという恰好で腰をかけていますね。(中略)すると、やっと男が口を切るのですね、「どっかでお目にかかりましたね」って、おどおどした小さい声です。多少予期していたので、私は別に驚きはしませんでしたが、不思議と思い出せないのですよ。そんな男、まるで知らないのです。
(以下、略)
そんな瓢箪池は戦後埋立られてしまった。私の母親の話によると、戦前の瓢箪池は、地元の子供達がおたまじゃくしをとって遊んでいた長閑かな場所だったようだが、戦後は、闇市が立ってぶっそうになってしまったようだ。そして今は2枚目の写真のように、瓢箪池の跡地にウインズの場外馬券場が立っている。ウインズの前が浅草新世界だった。
今から1年ばかり前このブログでは、浅草新世界の話題がずいぶん盛り上がった。あの時、貴重な写真を提供していただいたsatoruさんに感謝。
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