このブログの蜘蛛の巣がはってしまった。そろそろ更新しなければと思いつつ永のお休み。書きたいことというか、これは書くべきだろうと思うこともいくつかはあったが、なんか気分乗らず、ほっておいた。
まずは、NHKの「その時、歴史が動いた」の5月16日放送の第289回、「日本ミステリー誕生 ~江戸川乱歩・大衆文化との格闘」のこと。
日本に推理小説という文学ジャンルを根付かせようという、乱歩の良心というか執念が紹介される。作品世界では、おどろおどろしいエログロ・ミステリーをこれでもかとたたきつけながら、一方で業界の世話役としてきめ細かく活動する面倒見のよさ。血塗られた手で、ニコニコ笑いながらビールのお酌をして回る。若い作家の新作を褒めて、勇気付ける。出版社と交渉して働く場をつくる。江戸川乱歩賞も作った。
そして、手に汗握る少年探偵団シリーズを世に出すことで、推理小説の社会的なポジションを高め、次世代のファンを作り出して、今日の推理小説界の礎を築く。
一文学者としての業績ということでいえば、純文学の文豪の仕事をしのいでいるとも言える。今風にいえば、ビジネスモデルをつくった人。だからその時歴史が動いたのでしょう。
番組の中で紹介されていた写真は、だいたいが「貼雑年譜」に出ていたものなので、ああこれ知ってるという感じだったけれど、今回面白かったのは乱歩のインタビューの肉声。べらんめえ口調で講談師の趣がある。こんな口調で出版社と交渉し、作家仲間を鼓舞・懐柔したのだろうな。そんな現場を見てみたいなと思った。
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