江戸川乱歩の少年物シリーズの第8作、「透明怪人」(昭和26年1月『少年』で発表)は戦争による中断をはさんで満を持して再開した少年探偵団シリーズであり、少年探偵団物が最高に輝いていた時代の力作といえるでしょう。透明人間という素材は乱歩のためにあるようなもので、少年物とはいえその“透明人間感”は大いに乱歩的です。庭の芝生の上を透明怪人が履いたローラースケートだけがくるくると滑っていくなんてのは、チャーミングだなあと感心します。
その「透明怪人」狙われるお宝は、島田家に伝わる「真珠塔」。こんな塔です。
「あなたは真珠塔というものを、ごぞんじですか。高さ二十センチぐらいの五重の塔で、それに真珠の玉がビッシリとはりつめてあるのです。何百ともしれぬ最上の真珠でできた、宝玉の塔なのです。この真珠塔は大正時代の大博覧会に、三重県の真珠王が出品したもので、なくなったわたしの父がそれを買い取ったものです。そのころのねだんで十万円でした。今でいえば二千万円に近いものです。あの目に見えないやつは、宝石商から頸飾りをぬすんだそうですが、あの頸飾りの何十倍という、ねうちのあるものです。あいつは、それを知って、つけねらっているのじゃないかと思うのですよ」(以下、略)
怪人二十面相が狙うお宝といえば、私の記憶では「○○王家に古くから伝わる巨大なダイヤモンド」と「○○の女王と呼ばれる真珠」が印象深いです。難攻不落の大金庫を破って、黒い革の手袋をした二十面相が、お宝の掴み取る。そして、「たしかにいただいた、二十」と勝利のメッセージを残して、何処かへ消える。というのが美学ですね。
乱歩好きの皆さんの「お宝」のイメージってどんなもんなんでしょう?一度聞いてみたいものです。
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