江戸川乱歩の少年物、少年探偵団シリーズの第3作「妖怪博士」は、昭和13年1月から1年間『少年倶楽部』に連載されました。お話の世界は前2作と共通して、怪人二十面相、明智小五郎、小林少年を中心にして展開されます。ただこの作品では、少年探偵団という集団の存在を強く意識しているようで、一般の少年が団員として事件(冒険)に巻き込まれていきます。
今回の主役は相川泰二君という麻布にすむ小学校6年生(十三四歳)、彼がある春の日曜の夕方、謎の老人に出会い尾行を開始するところから物語は始まります。
相川君のお父さんは大手軍需企業の技師長で彼が自宅に厳重に保管しているある軍需機密を怪人二十面相扮する妖怪博士が狙うというわけです。
世界的な美術品を集め尽くすことに執念を燃やしているはずの二十面相が今回は、敵の手に渡ると日本軍に大きな影響を及ぼすという機密文書。この時代に盗まれることで読者にインパクトを与えるのは、美術品よりも機密ということなのでしょうか。
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