光文社文庫の「江戸川乱歩全集」全30巻が先月完結しました。2003年の8月に「孤島の鬼」と「大暗室」の2冊の発売を皮切りに、2006年2月の「探偵小説四十年(下)」まで、足掛け3年間にわたって刊行されました。光文社文庫の当シリーズは、ほぼ発表年代順に、小説も少年物も随筆・評論もジャンルを横断して網羅するという今までにないユニークな編集方針で作品が収録されており、また各作品の終わりには乱歩自身の自作解説を紹介、解題も充実しており、資料的な価値の高い仕上がりになっています。装丁についても、全作品に勝本みつる氏のオブジェをビジュアルに使用し、扉部分には初版本や発表当時の広告やポスターなどをカラー写真で掲載しています。その上、紙も厚く豪華なつくり、おまけに文字も大きいです。1冊平均25ミリ以上の厚みの本が30冊並ぶボリューム感が乱歩マニアにはたまりません。この全集を毎月買うのが楽しみだった私には、完結で少しばかり寂しくなりました。昔、講談社の江戸川乱歩夫全集、〜黒い箱入りで25巻揃え、全部並べると背表紙が地下室の絵になるやつ〜、の解説で筒井康隆が、「全集の発刊は作家のお祭りだ。僕も乱歩のお祭りに参加できて、とてもうれしい」と書いていました。この気持ちはいわば祭りの後の寂しさですね。次はどの出版社がお祭りをやってくれるのか、今から待ち遠しいのです。
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