作家・演出家の久世光彦さんか亡くなった。私にとって久世さんは「一九三四年冬-乱歩」の作家。この作品の中で乱歩が創作する作中作品「梔子姫(くちなしひめ)」のなんともエロティックで不思議な味が忘れられなくて、その後、「聖なる春」「泰西からの手紙」「怖い絵」「桃」など立て続けに読み込んでいったものです。これらの作品は内容が素晴らしいことはもちろん、本そのものの出来が美しい。通常よりもちょっと大きめで紙もよくて挿し絵もきれい。私の本棚のなかで宝物のような作品たちでした。私は久世さんの作品を愛していただけでなく、久世さんの美意識とかセンスにもとても惹かれていたのです。
久世さんは享年70歳。亡くなる前日も普段と変わらない様子で仕事の打ち合わせをしていたそうです。突然に訪れた最期でした。心からご冥福をお祈りします。
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