前回に引き続いて「黄金仮面」のことです。この作品では明智小五郎が戦う相手はあの世界的なビッグネーム、アルセーヌ・ルパンです。まさにワールドクラスなわけですね。
現在刊行中の光文社文庫の『江戸川乱歩全集』の第7巻『黄金仮面』冒頭の作者、江戸川乱歩氏曰くで、乱歩が作品について語っている部分があります。
こんな感じです。
私は、最近。従来の「小探偵小説」を脱して、もっと舞台の広い「大探偵小説」へ進出したいと思っている。今回の「黄金仮面」は実にその第一歩である。
本編活躍の主人公は、例のお馴染の素人探偵明智小五郎であるが、彼も段々に成長しつつある。この小説では相当大きい活躍が出来る筈だ。相手役の悪魔は恐らく読者を驚かせるに足る人物だと信じてる。作者はその驚くべき人物を、果してよく扱いこなせるかどうかを自ら危む程であるが、そこがまた本編執筆について作者が一層興味を感じている所以でもある‥‥
「キング」昭和5年8月号
もちろん「黄金仮面」は、モーリス・ルブランが自分の小説にコナン・ドイルのホームズを登場させてルパンと対決させたことに刺激されて、乱歩がルパンを東京に呼んできて、明智と競わせているわけです。いってみればJリーグにジネディーヌ・ジダンが来たような感じですね。
その時に、ヨーロッパのなかで戦っている分には問題ないけど、日本に来てしまうとルパンは外人だから目の色が違う、変装しても目立ってしまう。というわけで乱歩が思いついたのが、「そうだ、黄金の仮面を被せてしまおう」ということになったようです。ねっ、面白いでしょう。
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