羽柴家からまんまと『ロマノフ王家の大金剛石』を手に入れた怪人二十面相が次に狙ったお宝は、鎌倉時代の名工安阿弥(仏師快慶こと)の作といわれる観世音像。国宝級の美術品です。二十面相はこれを誘拐した羽柴氏の愛息壮ニくんと引き換えに差し出せと通告してきます。
観世音像の描写はこんな感じです。
蓮華の台座の上に、本当の人間の半分程の大きさの、薄黒い観音様が坐っておいでになります。元は金色まばゆいお姿だったのでしょうけれど、今はただ一面に薄黒く、着ていらっしゃる襞の多い衣もところどころ擦り破れています。でも、さすがは名匠の作、その円満柔和なお顔立ちは、今にも笑い出すかと思われるばかり、いかなる悪人も、このお姿を拝しては、合掌しないではいられぬ程に見えます。
三人の泥棒は、さすがに気がひけるのか、仏像の柔和なお姿を、よくも見ないで、すぐ様仕事にとりかかりました。
(以下、略)
この後、「怪人二十面相」のなかでも、また少年探偵団シリーズなかでも特にお馴染みのシーン、観世音像に変装した小林少年が二十面相に拳銃を突きつける息詰まる対決が始まります。少年時代の私はこのシーンがかっこよくてふるえました。このあと、二十面相は卑怯にも小林少年を落とし穴に誘い込むのですが、勇気凛々小林少年は探偵七つ道具(!)のひとつ伝書鳩のピッポちゃんを使って虎口を脱します。
これに感動した私は「あー、監禁されたいなぁ」と憧れたものです。
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