いきなりではあるが、「人間豹」。
乱歩作品には他に名作がたくさんあるのに、Blogを始めるにあたってこんな異色作品から再読してみました。私が好きな作品のひとつです。まあ、乱歩ハチャメチャランキングの上位にくる作品だと思います。
この「人間豹」は青年物作品にもかかわらず、人と豹の中間の怪物が堂々と登場する。内容はサービス満点、しかもデタラメ。ストーリーもずいぶん破綻しています。
乱歩さんとしては、連載が大衆娯楽誌の「講談倶楽部」だから、「新青年」のように本格物じゃなくてもOKね。とばかり勢いで書き飛ばしたわけでしょう。
私は「人間豹」恩田が浅草公園を徘徊するシーンが大好きで、観音様の裏手の境内をよつんばいになって走ったり、仁王門の大提灯の上から仲見世を見下ろしていたりと大活躍します。浅草と「人間豹」という一見意外な組み合わせを明智小五郎はさも当然とばかり、こう解説します。
(以下、引用)
「いや、そうとも限らんよ。東京じゅうでこの公園ほど、犯罪者にとって究竟の隠れ場所はないともいえるんだ。ここは都会のジャングルだよ。和洋あらゆる種類の建物がゴタゴタと立ち並んでいる。おびただしい露店の群れがある。到る処に抜け裏がある。その上ひっきりなしの大群衆だ。それらがすべて、犯人が身を隠す叢林にも等しいのだぜ。もしあいつがこの公園を隠れがにえらんだとすれば、その着想に敬服しないわけにはいかん。人間豹と都会のジャングル、実にうまい取り合わせじゃないか」
都会のジャングルだった頃の浅草を偲んで、私は今日も徘徊するわけです。
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