蕗屋清一郎は、同級生の斎藤勇が住む資産家の下宿屋未亡人を殺害。未亡人の財産が目当てだった。
蕗屋清一郎は綿密な準備の末とうとう未亡人を殺害し、彼女が溜め込んでいた大金をまんまと手にする。
事件捜査を担当した笠森判事は得意としている心理試験を使って、蕗屋清一郎に捜査の手を伸ばそうと試みる。しかし万全の事前準備を行って心理試験の裏をかこうとする蕗屋の抵抗に会って、困り果てていた笠森のもとを明智小五郎が訪れる。
このとき明智は、初登場した「D坂の殺人事件」から半年経っているという設定。半年の間にさらにいくつかの事件を解決して、世間に認められ有名人になっていた。明智小五郎はもう今ではただの書生ではない。
明智は完璧にコントロールされた蕗屋の心理試験の盲点を見事に見破って、嘘を見破って行く。そして最後は蕗屋を心理的に追い込んで自白させてしまう。
心理試験は大正14年2月に「新青年」に発表された。正統派の謎解きを目指す若くて野心的な乱歩は、ミュンスターベルヒの学説を引用するなど、頭でっかちで固い。しかしそこに、「D坂の殺人事件」に次いで、明智小五郎を登場させる事で、乱歩らしいエンターテインメントを披露している。「心理試験」は乱歩初期の名作として評価が高いが、乱歩自身は発表後、もう既に行き詰まりを感じていたと語っていた。
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