浅草の吾妻橋の袂には水上バスの乗り場がある。青いペンキ塗りの古ぼけた乗り場は天気のよい休日ともなれば、ディズニーランドのアトラクションのような行列ができる。(というのはちょっと言い過ぎだが)
今、その乗り場が改装中ということで、青いペンキの乗り場の横にプレハブの券売所と乗り場が仮営業している。そして写真のように水上バスも100メートル位上流の岸に接岸している。
案内によると、この改装工事は平成21年2月20日から1年半の予定で行われているとのことで、来年の夏まではこの状態で仮営業を行う模様だ。
この水上バス乗り場といえば、江戸川乱歩の「陰獣」のなかで、死体発見現場として登場する。こんな風に‥‥。
三月二十日の朝八時ごろ、浅草仲店の商家のおかみさんが、千住へ用達しに行くために、吾妻橋の汽船発着所へきて、船を待ち合わせるあいだに、その便所にはいった。
そして、はいったかと思うと、いきなりキャッと悲鳴を上げて飛び出してきた。(中略)
とにかく便所にはいって調べてみると、やっぱり穴の下一尺ばかり間ぢかに、ポッカリと人の顔が浮いていて、水の動揺につれて、顔が半分隠れるかと思うと、またヌッと現われる。
まるでゼンマイ仕掛けの玩具のようで、凄いったらなかったと、あとになって爺さんが話した。
それが人の死骸だとわかると、爺さんは俄かに慌て出して、大声で発着所にいた若い者を呼んだ。(以下、略)
主人公の素人探偵が惚れてしまう謎の美女、静子の夫である小山田六郎の変死体が便器ごしに発見される場面だ。新装なった今度の乗り場のお手洗いはどうなっているんだろうな。乱歩縁の「陰獣トイレ」とかならないかな。(ならないよな。)
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