先週あたりから我が家の模様替えと大掃除をしている。私がというより主に妻がしているが、私も楽しそうなところはやる。主として本棚の整理などだ。
山のように積んであった文庫本の棚を作家順に並び替えていると、中井英夫の「虚無への供物」ばかり5冊も出てきた。「虚無への供物」は初めて読んだ高校時代から、今までに少なくとも4回は再読しているくらいマニアックなファンなので、装丁や出版社が変わるたびに必ず買っている。最初の講談社版のマンドリンを抱えた薔薇男の表紙のタイプだけでも3冊あった。
初めて「虚無への供物」を買ったの時はまったくの予備知識なし、本屋でただぶ厚い本だったこと、帯に推理小説の最高峰、奇書などと書いてあったせいだ。当時乱歩や横溝をむさぼるように読んでいた私は、なんか読み応えがあるというか読むのが苦しそうな本が欲しかったのだと思う。だから本屋に並んでいた文庫で一番厚くて不条理そうなやつを選んだ。もう1冊どちらにしようかと迷った本は、ウイルキー・コリンズの「月長石」だった。でもやっぱり日本人作家を選んだ。最後にちょっと日和ったわけだ。
以来、中井英夫には完全にはまった。当時講談社から次々に刊行された文庫シリーズは次々と買いまくり、三一書房の全集を集め、古本屋を回ってハードカバーを探し、いつ完結するかもわからない断続的な創元社の文庫全集を待ち続け、また「幻想文学」の中井特集を揃えというコレクターになってしまった。
どうやら、この「虚無への供物」と小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」と夢野久作の「ドグラマグラ」を日本推理小説の三大奇書と呼ぶらしい。他の2冊も私の思い出の愛読書である。
いえ別に「虚無への供物」をみんな読みましょうと言っているわけではありませんよ。時間のたくさんあるお暇な人はどうぞということで。
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