乱歩の少年物のなかでも人気の高い作品である「青銅の魔人」には、「皇帝の夜光の時計」というお宝が登場する。全身機械仕掛けの怪人はその不気味な姿を街中にさらしながら、時計を次々と盗んでいく。それもありふれた時計ではなくて、高価なもの由緒あるもの、珍しいものばかりを。
その青銅の魔人が狙ったお宝時計こそが、皇帝の夜光の時計。この時計の持ち主は手塚龍之助。戦前は大金持ちであったが、現在では困窮しいろいろな財産を手放してしまっていた。しかしそのなかでも、皇帝の夜光の時計だけは大切に所蔵していた。それはユーロッパの小国の皇帝が愛用していたという大型の懐中時計だった。
以下、引用する。
機械がよくできているばかりではなく、がわのプラチナにはみごとな模様が彫刻してあって、それにダイヤモンドや、そのほかの宝石が無数にちりばめられ、時計というよりも、一つのりっぱな美術品なのです。無数の宝石のため、暗やみでも虹のような光をはなつというので、この時計は「皇帝の夜光の時計」と名づけられていました。
(以下、略)
手塚龍之助氏はこのお宝を青銅の魔人から守るために、名探偵明智小五郎に依頼をすることになる。
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