さていよいよ「黒蜥蜴」です。「黒蜥蜴」は昭和9年1月から『日の出』に連載されました。乱歩作品のなかでもそのファッショナブルでロマンチックなストーリーは人気が高いですね。そして何よりもこの作品の評判を高めたのは、三島由紀夫の脚本による舞台化です。今まで様々な配役で何回も舞台化されてきた大当たりの演目です。
物語は、黒蜥蜴と呼ばれる神出鬼没の女賊緑川夫人と、ご存知名探偵の明智小五郎が繰り広げる追いつ追われつの知恵比べとロマンスです。緑川夫人は美人で残酷でおしゃれです。ほんとにほれぼれします。以下、舞台上演に際しての乱歩の宣伝コメントをご紹介します。
「黒蜥蜴」は戦前の私の多くの通俗連載長編の一つで、私の小説では唯一の女賊ものである。美しい女賊と明智小五郎との、おそろしくトリッキィでアクロバティックな冒険物語だが、この二人、追うものと追われるもの、かたき同士が愛情を感じ合う。三島由紀夫君はその女賊と探偵の恋愛に重点をおいて脚色されたようである。筋はほとんど原作のままに運びながら、会話は三島式警句の連続で、子供らしい私の小説を一変して、パロディというか、バーレスクというか、異様な風味を創り出している。主演者も水谷、芥川両氏の初顔合わせということで、非常に風変わりな面白い劇になるだろうと、私も上演の日を待ちかねている。
(以下、略)
この時のキャスティングは、水谷八重子(黒蜥蜴)、芥川比呂志(明智小五郎)、田宮二郎、大空眞弓、賀原夏子ほかとのことです。確かに面白そうです。
私はもうずいぶん昔、1997年に青山劇場で「黒蜥蜴」のお芝居を観ました。配役は緑川夫人(黒蜥蜴)は言わずとしれた美輪明宏。そして明智小五郎が名高達男。よかったです。美輪明宏の怪しい美しさといったら、感動ものでした。美輪明宏が「明智さん」と呼びかける声は独特のイントネーションでしかもユラユラと揺れるんです。もうたまりません。私は前にも何回か、「蜘蛛男に殺される井上和香」とか「滝川クリステルの陰獣」とか、この役は誰でしょう?的なお遊びをしてきましたが、じゃあ一体「黒蜥蜴」は誰がいいでしょうか?
私はどうも誰が美輪明宏に近いかなんて考えてしまうのです。
皆さまご意見をお聞かせください。
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