最近読んで面白かった本を2冊。
まずは瀬戸内寂聴の「奇縁まんだら」。現在、日経新聞の日曜版(以前は土曜日)に連載中の人気シリーズだ。その1年分が単行本にまとまった。この作品は瀬戸内が敬愛する作家仲間(先輩や同輩)との暖かく時に可笑しい奇なる縁が軽快なエッセイで語られている。そして毎回、横尾忠則の美しいカラーのポートレートがコラボする。もちろん今回の単行本にも横尾の作品がカラーで収録されている。毎回面白いが、とくに私は三島由紀夫、稲垣足穂、松本清張、荒畑寒村あたりが気に入っている。
そして、もう1冊は、石原慎太郎の「オンリー・イエスタディ」。こちらは雑誌「ゲーテ」に連載されていた。しかし私は「ゲーテ」という雑誌をほとんど手に取ったことはないから、最終18話の「懐かしきキイクラブ」だけを読んでいた。ただこの話は面白くてずっと印象に残っていた。
「オンリー・イエスタディ」も「奇縁まんだら」同様に著者が今までの人生で出会って来た印象深い人々との付き合いをオマージュとして、そして自らの極上のメモリーとして書き連ねて行く。そしてそこには誠に興味深い写真も収録されている。
奇しくも同じ時代を共有して来た男女の作家の、同じようなスタイルの本なのだけれど、そのアプローチはずいぶん違っている。いかにも先輩大家に愛されたであろう気遣いに満ちた可愛らしい瀬戸内と、傲慢で自信満々、時としてほら吹きドンドンな気さえ感じる過剰な男、石原。よく対称をなして、どちらも素敵である。
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