気鋭の文芸評論家である福田和也は私の今一番好きな作家のひとりです。あのいかにも怠け者風のルックス(実際は働き者)と、食欲・物欲が強いところがなんか共感できることもあり、新刊が出ると次々と買ってしまうわけです。
「作家の値打ち」も「総理の値打ち」も「地ひらく」も「乃木希典」面白かったです。そして今読んでいるのが、「総理の資格」。歴代の総理大臣を大胆にも100点満点で採点する「総理の値打ち」とは違って、現在の政権である小泉総理、森総理、田中真紀子、田中康夫長野県知事、安倍幹事長など馴染みの深い人々について斬っていきます。
なかでも面白かったのは、小泉総理や森(元)総理が会食に使った高級レストランや料亭に取材と称して出かけていき、同じメニューを食べてみて、あーだこーだと批評する企画。たとえば、小泉首相がよく使う高級料亭「なだ万山茶花荘」についてはこんな具合です。
正直に云うと、今回訪れた店の中で、もっとも印象が薄かったのがこの店だ。値段は一番高かったのであるが、何だか、具体的な政治目標がまったくなく、ただ政権維持だけが至上命令となっている現在の空疎な政局を考えると、この店が実力者たちに節目、節目で使われているのも理解できるような気がした。 料金総額二人で十三万三千三百五十円也。
また、田中真紀子や田中康夫については、電車の中でしゃがんでクリームパンをほおばっているおばさんにオーバーラップさせ、公のなかでのみっともなさに頓着しなくなった日本人の変質を憂いているわけです。お茶を飲みながら読むには少々刺激的な本なのですが、お奨めの一冊です。
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